Thursday, April 9, 2009

ストレステストでストレス感じてる当局

筆者がグースカ寝てる間に、ニューヨークタイムズのネット版に米金融機関のストレステストの結果が大丈夫そう、と伝えられ、今日(9日)は、日本でも、金融株が持ち上がったそうじゃないですか。

さっき読んだブルームバーグの記事から以下抜粋↓


『一方、米紙ニューヨーク・タイムズは8日、米政府によるストレステスト(健全性審査)の対象となっている米金融機関19社がすべて、審査に合格する見通しと報じた。昼に伝わった同報道は、世界的な金融システム不安後退につながり、午後に株価指数は先物主導で上げ幅を拡大。日経平均、TOPIXともこの日の高値圏で終えた。 』


ついでに、ニューヨークタイムズの原文も、どうぞ。
Banks Holding Up in Tests, but May Still Need Aid (2009.04.08)
http://www.nytimes.com/2009/04/09/business/09bank.html?scp=3&sq=bank%20stress%20test&st=cse

   ★   ★   ★

Murray Hill Journalを真面目に読んでくださっている読者の方なら、ひと月前に、ここに筆者が何と書いたか覚えてますね?

え?覚えていない?では、その日記からそのまま引用いたしましょう。


『・・・だから、当局のストレステストの結果がどうなるかという点については、いまから答えはわかってる。

ストレステスト対象になってる銀行のうち、最大手の数行については、程度の差こそあれ、自己資本は充分という結果となり、テストにパスするでしょう。

ここの2月6日付けのエントリー『米国最大の銀行が国有化?(でも自己資本比率10%超もあるんですけど)』で述べたとおり、自己資本が充分ある銀行が国有化されることは定義上ありえないんである。(「充分あります」=「国有化しません」、ってことの【つじつま】つけるためにストレステストやるんだからね。)

ただし、ストレステストに代表される計量モデルってのは、所詮、静的(static)な「モデル」であって、サイコロジーを伴って刻々と生き物のように動く市場のダイナミズムまでは把握できない。毎日テストやってても、「前提条件」からぶっとんだ事態が実際に発生したら、モデル上で推計されていた額をはるかに上回る損失が発生しちゃう、というのは言わずもがな。

だからストレステストの結果は、注目してもしなくても、どっちでもいいような気もする。発表直後はポジティブニュースとして一時的に株価を支えるかもしれないけど、本質的な問題には、関係ない。・・・』

3月11日のMHJ記事(『売り疲れのNY市場、はしゃいだ後ですぐに息切れ』)から引用


ね?言ったとおりでしょ?

さぁ~「ウキウキ組」のみなさん、またまた「キター!」なネタが来ましたよ~~~!

“発表直後はポジティブニュースになる”けれど、これから商業用不動産の話も待ち受けてますんで、金融株の激しいボラティリティはきっと続くよ。

デイトレ仲間の皆さん!!先週末に仕込んだ金融株のショートポジション、あたくし、うまくいきましたわよ(マイケル・メイヨさまさま)。ここでまた、金融株にプラス材料出ましたから、次の悪材料が出てくるまで、ウキウキ組の皆さんが作ってくれるモメンタムに素直に一緒に乗っかって、ともにお小遣い稼ぎ頑張りましょうネー!(笑)


   ★   ★   ★


しかし、昨日、こちらNY市場で話題になってたのは、お堅いNYタイムズによる報道より24時間前に流れた、もっと下世話でオイシイ記事の方である。

ニューヨークのタブロイド紙「New York Post」に8日掲載された記事。

FDIC Blasts Treasury's Stress Tests for Nation's Largest 19 Banks (2009.04.08)
http://www.nypost.com/seven/04082009/business/fdic_bair_s__teeth_163380.htm

NYポストの記事によると、FDIC米預金保険機構のインサイダー達が、「財務省と連銀が行っている銀行のストレステストは見せかけばかりで実はなし」とポストの記者に言ったそう。

FDICからこの件について正式なコメントは取れなかったそうだが(取れるわけない)、相変わらず、FDICと連銀は【犬猿の仲】やってますねー。

米国の銀行規制当局の仕組みというのは、FRB(連銀)あり、FDICあり、 OCCあり、OTSあり、これにさらに、クレジットユニオンの当局あり、州ごとに銀行当局ありと、実に「当局だらけ」である。さらには、証券がらみでSECは出てくるわ、保険がらみで州の保険担当規制当局は出てくるわ、横っちょからFASBなんかも参加して、みんなでワーワー口を出すもんだから、当局同士の権力争いは、いつも大変である。

中でも、国家の中央銀行FRBと、国家の銀行は全部握ってるFDICは、それぞれが、金融機関のお目付け役としてはかなりの権力持ってるから、お互いのことが昔から大嫌い。(FRBは銀行持ち株会社は権限あるけど、そうじゃなきゃ権限外だったから、全米の銀行という銀行に規制の権限持ってるFDICの顔色みながらやるしかなかったんだよね。)

また、SECも、自分達が何かやろうとするとすぐさまFRBやFDICが難癖つけてくるんで、大嫌い。

FRBは自分達で市場に直接入って金融調節やったりしてるから、市場の動きは自分達が一番よく知っているという自負があって、基本的に弁護士と会計士ばっかのSECに対しては「机の上でルールと法律いじくるだけの無能集団」と内心思っている。

財務省はFRBのことを「独立の2文字を振りかざしてなかなか中央政府の思い通りに動いてくれない目の上のタンコブ」と警戒している。

でも、いちおう、「金融市場の安定」に注力するのが当局の皆様のミッションでありますからして、表面上はニコニコ笑顔で協力し合うフリしてるけれど、今回のストレステストに対するFDICのインサイダーリークみたいに、時々こうして、日頃のウップン晴らしのつもりか、背中からバサーと切りつけたりするんである。

権力争いというのは、ホント、怖いですわね・・・。

しかし、今回の金融危機のガタガタで、彼らの力関係に幾分変化が生じた。

まず、FRB連銀が、業種を超えたスーパーレギュレーターとしての地位を得るのに財務省のお墨が付いて、これまで以上のパワーを持つことに。ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなどの証券最大手も公的資金で助けてもらうために、去年銀行持ち株会社に変わりましたから、金融界の大御所はだいたい手中に収めた格好に。

逆に、メードフのネズミ講事件で10年以上も詐欺を見抜けなかったSECは、こころなしか、パワー後退ぎみである。

そして、90年代初頭からしばらくなかった銀行破たんが、ここにきて実際に何件も起こってきてるため、FDICの存在感も俄然高まってきた。破たん処理の実務はFDICのお仕事ですから。

ストレステスト――。

誰よりストレス感じてるのは、当局の関係者自身かも・・・。



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