Wednesday, June 10, 2009

薄商いの株価上昇と「ダークプール」

ここ最近の米株相場、下がってくると「何者」かが「小刻み」な買いに入り、インデックスを支えるという気持ち悪い動きが続いている。

株価下落のモメンタムが生まれそうになると、誰かが出てきてそれを阻止するんである。ショートもできんし、ロングになるほどコンビクションも持てないし、で、筆者はいま、この米株相場でどう動いてお小遣い稼ぎしようか、考えあぐねて日々イライラしている。

数週間イライラが続いていたため、ついに昨日の朝は発狂して、前回のMHJでは、

「景気回復の芽(Green Shoots)が出てきてるだとぉ?失業の増加ペースが減ってるだとぉ?冗談こくのもいいかげんにしやがれ、この、くそったれがぁぁぁあああああ!!!ドルは暴落、原油は2倍、米国最大の企業だったGMは破産して、代わって最大になったウォルマートは従業員の4割が政府援助を受けて生活してる、米国の製造業雇用数は39ヶ月連続減少、こんな国のどこが「Green Shoots」だってんだ、マザーXXXカー、グォワーーーーッ!!ギエーーーッ!!」


と叫びながら、バットでPCモニターをメチャクチャにぶっ壊す男の動画(#2)を紹介してしまった・・・。

昨日の朝の筆者の心中は、まさに、ああいう荒れ切った状態であったのだ・・・。

乱れたところをお見せしてしまった・・・お許しください・・・今日はもう少しマジメに書きます。

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しかしね、イライラして気分が荒くれてくるのも仕方ないではないか。

個別株の商いがやたら薄いのに、インデックスだけはジリジリ上げてゆくんだから。

相場全体の商いがすごく薄い。先日なんて、某大手金融株をリミットかけて200株売ろうとしたら、100株、60株、40株と、五月雨式に時間差ついて、ようやく売れてやんの。

たかだか200株の話ですよ、2千株とか2万株じゃないんだよ。取引金額にしてせいぜい5000ドルとか7000ドルとか、そんなハシタ金の取引ですよ。ブルーチップ株がこんな蚤以下、いや、バクテリア以下の小口でチマチマ取引されてゆくって、いったい、どういうことなのさ。

「低ボリュームで株価上昇」という状況について、一ヶ月ほど前の記事でちょっと古いが、Shocked Investor というブログサイトがチャートを示してみせてくれてる。

5月初旬の段階でインデックスEFTの取引高が目だって減少し続けているという話である。

”Spider”の愛称で親しまれるSPY、同じく”Diamond"という通称のDIAの人気インデックスETFの取引高が過去一年間の平均値と比べると、それぞれ32%、55%も下がっている。

ところが、価格のほうはジリジリ上げているんだよな。(チャートはどちらも、Shocked Investor より)

【SPY】の取引高とプライストレンド


【DIA】の取引高とプライストレンド


イントラデーの売買の取引パターンも気味悪い。

5月29日のMHJ記事の最後にも書いたが、SPYが、一日中ほとんど取引なかったのに最後の一時間だけグワーーーーーッと買いが入って、もともと薄商いなもんだから、猛烈に上がったりする。

Shocked Investorの投稿者は、こう書いている。

”A rally without volume is one to be very worried about. Is the current rally being fabricated, or have investors simply lost their money and can't get back in the market, or have they lost faith in the stock market?”

「5月初旬の株価ラリーは、なんらかの操作が働いているのか、投資家がカネがなくなってマーケットに戻ってこれなくなってるのか、あるいは、株式市場に対する信頼に傷が付いたのか。いずれにせよ、ボリュームが無い中で価格だけが上昇するのは非常に不安な気がする。」


そう、普通はそう思いますよね。

筆者も、4月後半からずっと気持ちが悪いと思っていて、5月も気持ち悪くてキャッシュ握り締めたまま脇に退いてマーケットを傍観していたが、6月になっても気持ち悪さは治まらず、手錠足かせかけられてるようにフラストレーションたまりまくって、昨日、筆者はついに発狂し、あのYouTubeのように、モニターをバットでぶっ壊したくなったんである。(アブナイ・・・)


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いったい誰がSPYを買いまくって支えてるのかを、Zero HedgeというブログサイトがちょこちょこブルームバーグのIOIA(Indication of Interest画面=クォートの実況中継)をアップデートして見せてくれてるんだけど、少し前はゴールドマンの独壇場だったみたいだが、ここ最近はJPモルガンのトレーディングデスクがブローカーになって、かなりご活躍のご様子

6月8日午後3時半(米株市場が閉じる30分前)にJPMが「小刻みな連続買いオーダー」入れてる図(↓)


SPYが下がりそうになってくると、GSやJPMのトレーダーに電話してSPY買わせてるのは、どこのどいつだ?

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ブルームバーグのIOIA画面に出てくるのは、パブリックオーダーでの取引なので、誰がオーダー出してるか、こうして丸見えだけど、これとは別に【丸見えにならないオーダー】があって、4月、5月は、どうやら、その秘密の香り一杯のオーダーが、米株市場でずいぶん活躍したらしい。

DARK POOL LIQUIDITY と呼ばれるオーダーブロックである。

「ダークプール」というのは、欧米の大手ブローカーや大手金融機関が自分達の顧客(機関投資家が多い)と直接売買をするオーダーブロックを指し、パブリックオーダーのブックとは別に管理される。ダークプールは、パブリックオーダーではないのでインディケーションを公に出さずに金融機関の壁の内側で独自に取引され、プライスは売買が成立した後に「結果」としてしか公表されないから、ブルームバーグのIOIA画面にも出てこない。つまり、値付けの過程が丸見えにならない。

6月3日付けのロイターに、こんな記事が載った。

Bank-run dark pools swelling in U.S. stock markets
「金融機関によるダークプール、米株市場で膨張」

ダークプールはもう何十年も存在していて、それ自体は目新しいものではないものの、ダークプールでの取引は、エグゼキューションの迅速さや手数料の低さなどが寄与して年々増加傾向にある。この記事によると、過去8ヶ月には、米株市場全体の9%がダークプールでの取引だったという。つまり米株市場のおよそ10分の一が、それを取引する金融機関の(ほとんどが大手金融機関)インハウスの資金(自己勘定資金)と混ざり合い、パブリックオーダーとしてプライスクォートもされないので、パブリックの目には触れないところで売買が成立している、というのである。

(ロイターの記事より)“Dark pools allow anonymous matching of large share trades with prices posted only after completion of the trade. They are increasingly popular among institutional and high frequency traders who find it hard to get large orders transacted on regulated exchanges because orders on such so-called public order books are becoming smaller, increasing the risk of markets moving against the originator of a large order.”

「ダークプールは大口のトレードを無記名で行うことが可能で、価格はトレード成立後にポストされる。規制がかかっている取引所でのパブリックオーダーはどんどん小口になっており、大口のオーダーを入れる投資家には逆作用になることがあり、そのため機関投資家や高頻度で売買を繰り返すトレーダーの間で、ダークプールの使用に人気が集まっている。」



しかし、市場の一割が、筆者も含めた「その他雑魚」投資家のみならず規制当局の目もとどかないところで取引されているというのはよろしくない、とSECは感じてるらしくて、昨日のフィナンシャル・タイムズでは、このダークプールの動きを監視するため取引のトラッキングを始めるという記事(↓)が伝えられていた。

NYSE Euronext and Liquidnet launch 'dark pool' tracking service

果たしてダークプールの存在が、4月、5月の気持ち悪い相場に何らかの影響を及ぼしたものなのか、ダークプールをもっと監視・規制することで、株価形成の透明性を高める効果につながるものなのか、筆者には皆目見当もつかない。

だが、取引のボリュームが全体的に薄いというのは、筆者と同じように、ここからどういうストラテジーで動くべきなのか考えあぐねて、脇に退いて様子見になっている投資家がけっこう多い、という証拠じゃないのか。

マスコミは市場が落ち着いてきた、安心感が広がってきた、とオウムのように繰り返しているけれど、商いの薄さを見る限りでは、マスコミのトーンを鵜呑みにはできないよ。

3月の売られすぎ(Oversold)から、4月・5月はショートカバーで持ち直し、そこの部分は修正されたかもしれないけれど、現時点でどれほどの市場参加者が「これでもう大丈夫」という強い安心感や、買い進もうというコンビクション(Conviction)を持っているのでしょうか。

むしろ、6月にはいってから、市場の空気に覇気が薄れ、なんとなく、どよーんと淀んできていると感じるのは、このわたしだけですか?



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