Thursday, January 12, 2012

欧州の資金市場は相変わらずナーバス

数日前、ツイッターで、日本の90年代後半の金融危機と07年のグローバル金融危機について、ブツブツとひとりごとをつぶやいていたのだが、それを@Speculatorbidさんがまとめてくださってたので、ありがたく頂戴いたします。





年の暮に市場の大方が予想していたとおり、2012年にはいってからも、欧州問題は一進一退を続けているな。ナーバスな動き。

いろいろな憶測や観測が飛び交って、そのヘッドラインのいちいちにマーケットは浮かれたり落ち込んだりして反応しているけれど、やはり、いちばん根本的なところで、「資金市場の警戒ぶりがハンパない」というのは、重たい事実ですね。

上のツイートまとめのいちばん最後のほうに出てくる「銀行が資金を抱え込んでる」という話、重要ですね。年末を無事越せたものの、政府当局が期待してるようには銀行はスッスッと動いてくれず、抱え込みは解消せず。

市場全体を包み込んでいるFEAR(怖れ)は、そう簡単には消えない。リクイディティを流しこんでも流し込んでも、サラサラ血液のようにお金が循環してくれない・・・。

上のまとめでブツクサ言ってたツイートのうち、どこから情報得たのか裏付けつけていないツイートがいくつかあるので、それの出典(?)のニュース記事リンクを、以下に控えておく。


(1) 「米金融機関が欧州エクスポージャをガクンと落としたというおエラいさんの発言」というのは、テレグラフのこの記事。

Debt Crisis As It Happens: January 9, 2012
(Telegraph, 1/9/2012)

この記事の19:28のところに、アトランタ連銀のロックハートが「欧州ソブリンへのエクスポージャ、特に弱小国へのエクスポージャを相当減らした」と述べたという記述あり。

19.28  Mr Lockhart added that the Fed would not rule out more money printing even if steady growth and "acceptable" inflation made it harder to justify:
Steady even if unspectacular growth accompanied by inflation in the neighborhood of 2pc justifies some reluctance to change, in either direction, the (central bank's) accommodative policy [...] At the same time, I think slow progress toward full employment justifies continuing consideration of whether more can and should be done.   

On European sovereign debt exposure, he said:
American financial institutions have reduced their exposures fairly substantially, particularly to peripheral countries.

 (2) 「欧州銀行のシニア債発行が年明けになって好調」というのは、こちらの記事。

European Banks Learn to Love the Bond Market
(Wall Street Journal, 1/10/2012)

記事の抄訳は以下のとおり。

欧州の銀行債市場は死んだ・・・などと言われていたがそれは誇張だったのではないかという見方が出てきた。1月に入って最初の10日間で、欧州銀行はユーロ建ての無担保シニア債を€14.9 billion ($19.02 billion)発行、ソシエテ・ジェネラルによると、これは2011年後半の半年間に発行された額の26%増し、とか。欧州銀行は、シニア債に加えて、€13.75 billionのカバード・ボンドも発行した。銀行債市場はまだ脆弱ではあるものの、年初は好調なスタート。2012年は欧州銀行債のロールオーバーが€800 billion来る予定。
 発行体はスカンジナビア、オランダ、U.K.など比較的信用力の強い地域に限られているものの、フランスの銀行も市場資金にタップできた。
 背景としては、①ECBの期限3年ローン(※1)が12月に実行され、2月にも2回目の3年ローンが控えており、銀行の突然死シナリオの可能性が後退したこと、②投資するサイドはキャッシュバランスを積み上げていたこと、③銀行側もユーロ圏の危機はすぐには消えることなく当面継続するという見解を受け入れたこと、④銀行自身のデレバレッジングと預金の増加が調達の必要性を和らげたこと、など。モルガン・スタンレーの試算では、銀行によるシニア債新規発行はネットで4年連続マイナス、減少額は€225 billion。
 とはいえ、センチメントが逆転することは多いにありえる。イタリアとスペインの国債スプレッドが拡大基調なのと、ギリシャの債務リストラの進捗が懸念。預金保護を目的とした規制当局の意向、および、カバード・ボンドやECBローンといった有担保調達の増加の両面から、無担保シニア債の劣後化の可能性が潜在的に残っている不安もある。資金市場がどこまでリスクを取るつもりかもはっきりしていない。スペインやイタリアの銀行が発行体の場合、シニア債の新規発行はこれより困難になるだろう。
市場のボラティリティは高いままになろうし、政治リスクが浮上して改善の目を摘んでしまうかもしれない。だがレギュレーターが欧州銀行のバランスシート強化促進に成功すれば、無担保シニア債、特に各国の最良銀行が発行したシニア債は、高いリターンをもたらす可能性はある。

※1 ECBの期限3年ローンと銀行のバランスシート上のブタ積みについては、2011年12月28日付のMHJ記事を参照。


(3) 「日本のCDSが中国のCDSよりワイド」というのは、次のチャートを参照。


オレンジが中国のCDS、緑が日本のCDSで、過去1ヶ月の相対推移。(1ヶ月前を基準値=0とした時に【相対的に】各々がどれぐらい%でワイドニングしたか、というグラフです。絶対値のチャートじゃないことに注意ね。)

スプレッドの「絶対値」でみると、今日1月12日現在では、中国のレベルが146bpsに対し、日本が154bpsで、ややワイド。

まぁ、ソブリンのCDSについては以前も書いたことありますけど、日本のCDS水準が中国のそれに近づいてたのはもうずいぶん前からの話でして(※2)、さらにいうと、絶対値がどこにいるからどうしたといった話でもないんで、ここのところ中国よりワイドになってるからといってギャーギャー騒ぐほどのこともないとは思いますけどね。(今日の日経新聞が書いてたような、「財政再建への取り組みが遅れれば、欧州にかかる市場の圧力が日本にも及びかねません」(ドキドキ)みたいなこじつけっぽい理屈でばかり動いているわけでもないんで。)

ただし、CDSの推移というのは、対象となる債券の発行体に対する市場評価を示唆する数値の一角であることは確かなんで、いちおう目にはいったからには、書き留めておきまする。

(※2)日本のCDSが中国のそれに近づいてるぞという話は、2009年11月30日付MHJ記事『ソブリンCDSについて』に書いてます。2年以上前からだよ。自慢しちゃうけど、先見の明があったので、読んでね~(笑)。

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